『ノベルゲームのシナリオ作成読本』
涼元悠一
秀和システム
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本屋に行ったらがっつり平積みだったため回収してきた。
大まかな内容は、シナリオの構想や世界観の設定、道具、文章を書く際の決まり、構成と伏線、立ち絵などの表現方法等を説明している。面白い、受けるシナリオの書き方講座と言うより、シナリオライターが行う作業の解説と言う印象。
関心を持っていたのが、ライターがどんな事を意識してシナリオを書いているかだったため少々肩すかしの部分もあるが、それに触れていた第8章の構成と伏線は興味を持って読んだ。
特に泣きゲーに言及した部分は書き手はどう思って文章を書いているのか若干触れている部分であるので参照してみると、自覚的な文章が飛び込んでくる。
しかしながら……実際に作り手になってみて、実感したことがあります。
単に泣きゲーをつくるだけ(*1)なら、そう難しくはないということです。
*1;「だけ」にルビあり
P177
なぜなら古来から使われてきた手法である事から分かるように、人間は本能的に泣く生物だからである。
又、泣きゲーの中でどう構造を持っているかというと、物語の前半部分で日常パートを描き、後半部分にて話を暗い方向へ向ける展開する構造を持ち、その流れに沿って泣かす方法を「萌やし泣き」と呼んでいる。
終盤の泣かせ方については第9章の特出演出でも触れているが(P216)、それよりも序盤の日常パートにていかにプレーヤにヒロインを印象づけるかが大事だと言うことである。
総じて、先人の積み重ねの結果、泣きゲーのテクニックは確立しており、それに沿ってシナリオを書けば成立しますよ、と説明しているのだが、
かくしてヒロインは今日も不幸になり、ストーリーはお涙頂戴に自ら向かっていきます。
ですが……これだけは言えます。
単なる泣きだけを突き詰めれば、その先は袋小路でしょう。
(中略)
いつかプレイヤーの舌も肥え、ただ泣けただけの作品を褒めそやすことがなくなれば……
その時、『感動系ゲーム』も『泣きゲー』も次のステップに立っているはずです。
P180
と限界にも自覚的な発言をしている。
正直泣きゲーのジャンルに関しては、既に何年か経過したが結局keyを上回る評価を得る模倣者が出なかったせいか、TYPE-MOONに話題の中心を持って行かれたせいか下火になっているようにも思えるが、動向をちっとも抑えていないのでよく分からない。
後、実況的一人称を初めて意識的に使った人として新井素子を挙げている部分(P127)や、昔、Leafのコンテンツ、俺にしゃべらせろに載っていた文書(開発者の「俺にしゃべらせろ!!」No.7 -脚本 : 青紫)を思い出す基本文章おさらい等を楽しく読んだ。
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